「ラグビーの聖地」として長年愛されてきた秩父宮ラグビー場の建て替え計画は、ファンの間で大きな不安と期待が入り混じるトピックとなっています。
神宮外苑再開発の一環として進められるこの巨大プロジェクトは、当初の計画から大幅なスケジュールの見直しが行われていることをご存知でしょうか。
完成時期の延期や新スタジアムの仕様変更など、現地で観戦を楽しむファンにとっては見逃せない情報が次々と更新されています。
ここでは、複雑化している建て替えスケジュールの全容と、私たちの観戦スタイルが今後どのように変わっていくのかを整理しました。
- 2026年の着工開始と2029年の完成予定日
- 現在の秩父宮ラグビー場が使用できる期間
- 新スタジアムの座席数減少と人工芝問題
- 建て替え工事に伴うリーグワン開催への影響
秩父宮ラグビー場の建て替えスケジュールと進行状況
神宮外苑地区の再開発計画において、秩父宮ラグビー場の移転と建て替えは中核をなすプロジェクトの一つとして位置付けられています。
しかし、環境保全への配慮や工事計画の見直しにより、当初発表されていたスケジュールからは数年の遅れが生じているのが現状です。
まずは最新の公式発表に基づき、着工から完成までの具体的なタイムラインと、現在地でいつまで観戦できるのかという核心部分について詳しく解説します。
頻繁に変更される工期を正しく把握することで、今後の観戦計画やチケット購入の参考にしてください。
2026年着工へ修正された最新の工事工程
当初の計画ではもっと早い段階での着工が予定されていましたが、最新の発表では新秩父宮ラグビー場の建設工事は2026年(令和8年)初頭の着工へと後ろ倒しされました。
この変更の背景には、神宮外苑の象徴であるイチョウ並木の保全に関する議論や、近隣環境への影響評価をより慎重に行う必要性が生じたことがあります。
具体的には、新スタジアムとイチョウ並木との距離を確保するために設計の一部が見直され、それに伴い準備期間が延長されました。
現在は既存の神宮第二球場の解体作業が進められており、その跡地がそのまま新ラグビー場の建設予定地となるプロセスを踏んでいます。
したがって、2026年からの約3年間から4年間が、実際の建設工事期間として設定されることになります。
新スタジアムの完成と開業は2029年以降の可能性
着工の遅れに伴い、新秩父宮ラグビー場の完成時期も当初の2027年目標から、2029年(令和11年)後半以降へとずれ込む見通しとなっています。
事業主体であるJSC(日本スポーツ振興センター)や関連企業の発表によれば、2029年の11月頃に工事を完了させ、その後の検査や準備期間を経てグランドオープンを目指すスケジュールが有力です。
つまり、私たちが新しいスタジアムで実際にラグビーを観戦できるのは、早くても2029-2030年シーズンのリーグワン開幕頃になる可能性が高いでしょう。
この数年の遅れは、2027年のラグビーワールドカップ開催国決定などの国際的なイベントスケジュールとも微妙に関係してくるため、ファンとしてはやきもきする期間が長引くことになります。
工事の進捗状況によってはさらに工期が伸びるリスクもあり、あくまで現時点での目標値として捉えておく必要があります。
現在の聖地はいつまで使用可能なのか
ファンにとって最も切実な疑問である「今の秩父宮ラグビー場はいつ見納めになるのか」という点については、新スタジアムの完成遅延が逆に「延命」をもたらす形となりました。
再開発の基本的な手順は「ところてん方式」であり、先に新しいラグビー場を完成させてから、現在のラグビー場を解体して新しい神宮球場を建てるという順序だからです。
そのため、新ラグビー場が完成する2029年頃までは、現在の秩父宮ラグビー場がそのまま主要な試合会場として使用され続けることが確実視されています。
一時期は「2027年で閉鎖」という情報も流れましたが、代替会場の確保が困難である以上、新施設への移行直前までは現施設が稼働し続けることになります。
ただし、老朽化による補修工事や、隣接地での工事の影響で一部エリアが立入禁止になるなどの制限が発生する可能性は否定できません。
リーグワンや日本代表戦への具体的な影響
工期の変更は、国内最高峰リーグである「リーグワン」の各チーム、特に東京近郊をホストエリアとするチームの興行計画に直接的な影響を与えます。
現在の秩父宮が2029年頃まで使用可能であるならば、少なくとも今後数シーズンは、これまで通り秩父宮を中心とした試合日程が組まれることになるでしょう。
しかし、解体と建設の切り替え時期となる2029-2030年シーズン前後には、一時的に使用できるスタジアムが不足する「空白期間」が生じるリスクも懸念されています。
その場合、国立競技場や駒沢オリンピック公園総合運動場、あるいは近隣県のスタジアムでの代替開催が増加することが予想されます。
日本代表戦についても、観客動員数が見込めるビッグマッチは国立競技場へ、それ以外のテストマッチは地方開催へといった振り分けが加速するかもしれません。
段階的に進む神宮外苑再開発の全体像
秩父宮ラグビー場の建て替えは単独の工事ではなく、神宮球場の建て替えや高層ビルの建設を含む巨大な再開発パズルの一部です。
フェーズ1として神宮第二球場を解体し、その場所に新ラグビー場を建設するのが現在の段階であり、これが完了しなければ次のステップに進めない構造になっています。
フェーズ2では、現在の秩父宮ラグビー場を解体して新神宮球場を建設し、最後に現在の神宮球場を解体して広場などを整備するという長い道のりが待っています。
この連鎖的なスケジュールの関係上、ラグビー場の建設遅れはプロジェクト全体の後ろ倒しに直結するため、施工主にとっても絶対に譲れないデッドラインが存在します。
今後も工事車両の出入りや周辺道路の規制など、観戦環境を取り巻く物理的な変化は断続的に続くことになります。
新秩父宮ラグビー場の仕様と懸念される変更点
新しく生まれ変わる秩父宮ラグビー場は、現在の開放的な雰囲気とは全く異なる、近未来的かつビジネスライクなスタジアムになることが予定されています。
「全天候型」というメリットが強調される一方で、ラグビーファンからは収容人数の大幅な減少やグラウンド環境の変化に対して不安の声が上がっているのも事実です。
ここでは、公開されている計画案や完成予想図をもとに、新スタジアムの具体的なスペックと、それが観戦体験にどのような変化をもたらすのかを深掘りします。
チケットの入手難易度やプレーの質にも関わる重要な変更点ですので、事前にその特徴を理解しておきましょう。
大幅に減少する収容人数と座席問題
新スタジアムの計画において最も議論を呼んでいるのが、収容人数が現在の約25,000人から約15,000人規模へと大幅に縮小される点です。
事業計画では、ラグビー開催時の固定座席数を約15,000席とし、イベント時や仮設席を含めても最大で20,000人程度に留まるとされています。
これは現在の満員時の熱気や、日本代表戦などで見られる2万人超えの動員力を受け止めきれない可能性を示唆しており、チケット争奪戦が激化することは避けられません。
特に人気カードやプレーオフなどの重要試合では、キャパシティ不足により秩父宮で開催できず、国立競技場などへ会場変更を余儀なくされるケースが増えるでしょう。
「聖地」でありながら、多くのファンが入れない場所になってしまうのではないかという懸念は、依然として払拭されていません。
人工芝の採用と選手への身体的負担
新スタジアムのフィールドには、天然芝ではなく人工芝が採用される方針が示されており、これも選手やファンから強い反発を招いている要素の一つです。
屋根付きの全天候型スタジアムにすることで日照時間が制限されるため、天然芝の育成・維持が困難であるというのが主な理由とされています。
しかし、ラグビーは激しいコンタクトを伴うスポーツであり、人工芝は天然芝に比べて選手の関節への負担が大きく、擦過傷などの怪我のリスクも高まると言われています。
世界的なスタジアムの潮流がハイブリッド芝(天然芝と人工繊維の混合)である中で、完全な人工芝を選択することは時代に逆行しているという批判も少なくありません。
コンサートなどの多目的利用を優先した結果、ラグビー競技そのものの質や選手の安全性が犠牲になるのではないかと危惧されています。
全天候型屋根の設置によるメリット
批判的な意見が多い中で、明確なメリットとして挙げられるのが、観客席とフィールドを覆う恒久的な屋根の設置による全天候型化です。
現在の秩父宮ラグビー場は大部分が屋根のない屋外席であり、雨天時の観戦はカッパが必須で、冬場の寒さも厳しいという過酷な環境でした。
新スタジアムでは天候に左右されずに快適に観戦できるようになるため、ライト層や家族連れにとっては来場のハードルが大きく下がることになります。
また、屋根があることで音響効果が高まり、応援の声が反響してより一体感のあるスタジアム・アトモスフィアが生まれることも期待できるでしょう。
空調設備の導入レベルについては未確定な部分もありますが、少なくとも雨に濡れながらの観戦という「修行」のような体験からは解放されることになります。
ビジネス重視へ転換する施設運営とサービス
新秩父宮ラグビー場のコンセプトには、単なるスポーツ施設ではなく、収益性を重視した「稼げるスタジアム」への転換が明確に盛り込まれています。
これは施設の維持管理費を捻出するために必要な措置である一方、従来の「安価で気軽に行ける聖地」というイメージからの脱却を意味します。
VIPルームの拡充や高付加価値サービスの導入など、これまでのラグビー観戦とは一線を画す新しいスタイルが提案されることになるでしょう。
運営母体も民間のコンソーシアムが主導することになり、よりエンターテインメント性とビジネス色が強い運営方針へとシフトしていきます。
VIPルームとホスピタリティ施設の拡充
新スタジアムの設計図で目立つのは、富裕層や企業接待をターゲットとしたVIPルームやホスピタリティエリアの大幅な拡充です。
グラウンドを見下ろす特等席にガラス張りの個室が設けられ、食事やアルコールを楽しみながらラグビーを観戦できる高額なチケット区分が新設される見込みです。
これにより、スタジアム全体の収益構造を改善し、客単価を引き上げる狙いがありますが、一般ファンにとっては「高嶺の花」となるエリアが増えることを意味します。
海外のスタジアムでは一般的になっているラグジュアリーな観戦スタイルですが、日本のラグビー文化にどれだけ馴染むかは未知数です。
一方で、こうした収益が施設のメンテナンスやファンサービスの向上に還元されるならば、長期的なメリットも期待できるかもしれません。
多目的利用を前提としたイベント会場化
新秩父宮ラグビー場は、ラグビーの試合がない日にも収益を生み出すために、コンサートや展示会など多目的に利用できる施設として設計されています。
人工芝の採用も、イベント時の養生や撤収をスムーズに行うための「稼働率向上」を優先した結果という側面が強くあります。
そのため、スタジアムの座席配置や音響設備、照明などは、スポーツ専用というよりはアリーナ会場に近い仕様になる可能性があります。
ラグビーファンからすれば「ラグビーが主役ではないのか」という寂しさを感じる部分かもしれませんが、都心の一等地で施設を維持するためには避けられない選択とも言えます。
試合前後のイベントや演出が豪華になるなど、エンターテインメントとしてのラグビー観戦の質が向上する可能性も秘めています。
大型ビジョンと通信環境のアップデート
老朽化した現在のスタジアムと比較して劇的に改善されるのが、大型ビジョンの設置やWi-Fiなどの通信インフラ、そしてデジタルサイネージの充実です。
現在の秩父宮にあるビジョンは一箇所のみで、席によってはリプレイやスコアが見にくいという課題がありましたが、新スタジアムでは最新鋭の映像設備が導入されます。
TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の判定映像や、詳細なスタッツ情報などがリアルタイムで鮮明に表示され、観戦の解像度が格段に上がることでしょう。
また、スタジアム全域での高速通信環境が整備されることで、スマホでの実況視聴やSNSへの投稿もストレスなく行えるようになります。
ハード面の近代化は、若い世代のファンを取り込むためにも不可欠な要素であり、最も恩恵を感じやすいポイントの一つです。
アクセス環境の変化と周辺エリアの整備
秩父宮ラグビー場の移転先は現在の場所からほど近い神宮第二球場跡地ですが、最寄駅からの動線や周辺の景観は大きく様変わりします。
再開発によって新たに生まれる広場や商業施設、そしてホテルなどがスタジアムを取り囲む形となり、街全体の人の流れが変わるからです。
これまでの「外苑前駅からイチョウ並木を歩いて正門へ」というお馴染みのルートも、新しい入口の位置や工事区画によって変更を余儀なくされます。
観戦前後の食事や待ち合わせ場所を含めた、新しいラグビー観戦の「動線」についてもシミュレーションしておく必要があります。
外苑前駅と青山一丁目駅からの新ルート
新スタジアムの位置は、現在の秩父宮ラグビー場よりもやや北側(神宮球場寄り)に移動するため、最寄駅からのアクセスルートにも変化が生じます。
東京メトロ銀座線の外苑前駅からはこれまで通り徒歩圏内ですが、スタジアムへの入り口がどの方向に設置されるかによって、所要時間や混雑具合が変わってくるでしょう。
また、都営大江戸線の青山一丁目駅からのアクセスについても、整備される歩行者デッキや広場の配置によって利便性が向上する可能性があります。
現在は試合終了後に最寄駅周辺が大混雑することが常態化していますが、再開発によって歩行者空間が拡充され、スムーズな退場が可能になることが期待されています。
新しい動線では、スタジアムに到着するまでのアプローチ空間も演出され、試合への期待感を高める工夫が凝らされる予定です。
併設されるホテルと商業施設の利便性
再開発エリアには、スタジアムだけでなく高層のオフィスビルやホテル、商業施設が一体的に整備される計画となっています。
これにより、遠方から観戦に来るファンにとっては、スタジアムのすぐ近くに宿泊拠点を確保できるという大きなメリットが生まれます。
また、試合前後に食事やショッピングを楽しめる店舗が増えることで、単に試合を見るだけでなく、一日を通して神宮外苑で過ごすという楽しみ方が可能になります。
これまでは試合が終わるとすぐに帰路につくか、混雑した渋谷・青山方面へ移動する必要がありましたが、エリア内で感想戦(アフターマッチファンクション)を行える場所が増えるでしょう。
ラグビー観戦を核とした「都市型スポーツツーリズム」が実現するエリアへと変貌を遂げようとしています。
イチョウ並木の景観と環境保全の取り組み
神宮外苑再開発において最もセンシティブな問題となっているのが、世界的にも有名なイチョウ並木の景観保護と樹木の伐採問題です。
新ラグビー場の建設位置がイチョウ並木に近すぎるとして批判を浴びたことを受け、計画では並木からスタジアムまでの距離(セットバック)を約8mから約18mへと拡大しました。
これにより、イチョウの根系への影響を最小限に抑えつつ、スタジアムと並木の間に緑豊かな遊歩道を整備する空間が生まれることになります。
観戦に訪れるファンにとっても、美しいイチョウ並木が維持されることは願いであり、新スタジアムが自然と調和した存在になれるかどうかが問われています。
完成後のスタジアムからの眺望や、周辺の緑地デザインがどのように仕上がるのかも、このプロジェクトの成否を握る重要な要素です。
まとめ
秩父宮ラグビー場の建て替えスケジュールは、2026年初頭の着工、そして2029年後半の完成へと修正され、現在の聖地での観戦期間はもう少しだけ続くことになりました。
この「猶予期間」は、慣れ親しんだ現在のスタジアムの記憶を刻むための貴重な時間であると同時に、新時代のラグビー文化を受け入れる準備期間でもあります。
新スタジアムには、座席数の減少や人工芝化といった懸念点が存在する一方で、全天候型の快適性や最新鋭の設備といった明確なメリットもあります。
私たちは、歴史ある秩父宮の伝統がどのように継承され、新しいスタジアムがどのような熱狂を生み出すのかを、厳しくも温かい目で見守っていく必要があります。
今後も工事の進捗状況や社会情勢によって、スケジュールや細かな仕様は変更される可能性が十分にあります。
まずは2026年の着工に向けた動きと、それに伴う現在のスタジアムの運用変更などの公式発表をこまめにチェックすることが大切です。
今の秩父宮ラグビー場で過ごせる残り数シーズンを大切にしながら、新しく生まれ変わる聖地の誕生を待ちましょう。


