試合前にラインの位置や広さが曖昧だと、戦術の組み立てや観戦の理解に小さな齟齬が積み重なります。ラグビーコートのサイズは「最大」と「許容の幅」で語られることが多く、言い換えや略称が混ざると混乱しがちではないでしょうか?
この記事では、公式基準に沿った数値と意味をひとつずつ整理し、各ラインの役割や実測の勘所までを同じ地図の上に並べ直します。最後まで読めば、練習設計や試合の見どころが手触り良く結びつき、迷いの少ない判断がしやすくなります。
- フィールドの最大寸法と許容範囲を正確に把握する。
- ラインの意味と測り方を同じ基準で揃える。
- 年代別やセブンズの運用差を現場で活かす。
ラグビーコートのサイズの全体像を正しく掴む
まずは「全体像」です。ラグビーコートのサイズはフィールドオブプレー(ゴールライン間)とインゴール、そして安全帯の三層で理解すると混乱が減ります。数字だけを追うより、目的と視覚の対応を揃えるところから始めてみましょう。
観戦ではプレーがどの帯で起きているかが駆け引きの解像度を左右します。あなたが選手や指導者なら、図上の位置が戦術の選択肢と直結するので、ここを丁寧に押さえていきましょう。
フィールドオブプレーの長さと幅
フィールドオブプレーの長さは最大100メートルで、これより短い設定も許容されます。幅は最大70メートルで、現場では68〜70メートル帯がよく用いられ、スタジアムや用地事情に応じて微調整されます。
この帯の内側にハーフウェイライン、10メートルライン、22メートルライン、さらにタッチからの5メートル・15メートルのガイドラインが置かれ、セットプレーやキックの到達基準を視覚的に補助します。
インゴールの奥行きと上限
各ゴールラインの外側にはインゴールが続き、その奥でデッドボールラインに至ります。インゴールの奥行きは最小6メートルから最大22メートルの範囲で運用され、競技場の設計と安全管理で決まります。
短いインゴールはキックチェイスやグラバーでの攻防をタイトにし、長いインゴールはボール保持側に再加速の余白を与えます。戦術設計では、この差がフィニッシュの選択肢を大きく変えます。
安全帯(ぬれぎぬの接触を避ける緩衝域)
タッチラインやデッドボールラインの外側には安全帯が必要で、少なくとも5メートルを確保するのが基本です。観客席が近い会場では、広告物や設備との距離管理も同じ基準で見直します。
安全帯は「ないと困るもの」であると同時に、現場のレイアウト上もっとも圧縮されやすい部分です。大会設営時はラインと同じ優先度でチェックしていきましょう。
実用早見表(最大・許容の基準)
| 部位 | 基準・上限 | 許容範囲 | 現場の着眼点 |
|---|---|---|---|
| フィールド長 | 最大100m | 短縮可 | ハーフウェイとの比率を維持 |
| フィールド幅 | 最大70m | 68〜70mが一般的 | 5m/15mラインとの見え方 |
| インゴール奥行 | 最大22m | 最小6m | キックの有効域とタッチダウン余白 |
| 安全帯 | 少なくとも5m | 不可縮域 | 観客席・設営物との距離 |
線の太さと視認性
ラインの太さは視認性に資する幅で引かれ、試合中の判定が影響を受けないよう統一されます。転写や再描画の際は色や太さのムラがないか、審判の見え方で確認してみましょう。
芝種や照明条件によってコントラストが変わるため、同じ白線でも夜間と昼間で印象が違います。公式練習の前に数カ所で視認性を点検すると安心です。
ラグビーコートのサイズを決める各ラインの意味と計測手順

同じ100メートルの内側でも、ラインの意味が分かれているからこそ駆け引きが生まれます。ラグビーコートのサイズを「線ごとの役割」で捉え直し、計測の起点と終点をそろえていきましょう。
ラインの命名は距離の由来と結びついており、セットプレーの規律やキックの制約がそこから導かれます。ここを共通言語にできると、指示が具体になりミスコミュニケーションが減っていきます。
ハーフウェイと10メートルライン
ハーフウェイはフィールドの中央で、再開キックの起点です。そこから両側に10メートルラインが引かれ、キックオフやドロップアウトでボールの到達基準を示します。
実測時は中央点からテープを伸ばし、左右均等に墨出しするのが基本です。風や勾配で視差が出やすいので、二方向からのクロスチェックを習慣にしていきましょう。
22メートルラインの戦術的意味
22メートルラインは自陣と敵陣の境界を戦術上強く意識させる指標で、キックの選択とリスク管理に直結します。ラインをまたぐ位置で、捕球や蹴り出しの判断が変わることを選手に共有します。
実測ではゴールラインから22メートルを正確に取り、タッチラインに直交する形で描きます。曲がりは審判の走路で目立つため、基準墨の見直しが効果的です。
5メートル・15メートルのガイドライン
タッチからの距離を示す5メートルと15メートルラインは、ラインアウトの位置決めやスクラムの安全距離をガイドします。視覚的な「幅の感覚」を選手に植え付ける補助線です。
幅の基準はフィールドの最大幅に依存せず機能します。タッチ際のプレー安全性に直結するので、塗り直しの優先度を高く設定していきましょう。
トライラインとデッドボールライン
ゴールライン(トライライン)はフィールドの終端で、そこから外側にインゴールが広がります。デッドボールラインはインゴールの終端で、ボールが越えればプレーは死にます。
両線の間隔は会場固有の設定ですが、短すぎるとグラバーやチップの価値が下がり、長すぎると守備の最後の一歩が伸びます。チームの得点様式と照らして読み替えましょう。
計測フローのチェックリスト
- 基準点の再確認(中央点・ゴールラインの起点)。
- 長さを先に確定し、幅は後から直交で落とす。
- 10mと22mは中央基線から同時に描く。
- 5m・15mは両タッチから内側へ等距離で入れる。
- 曲がりや歪みは対角線で補正し視差を消す。
- 安全帯は「最低5m」を確保し動線を空ける。
- 夜間照明下での可視性を別日に再点検する。
ラグビーコートのサイズが左右するインゴールの攻防と運用差
インゴールは同じ面積でも質が変わります。ラグビーコートのサイズのうち、インゴールの奥行きは最小6メートルから最大22メートルまでの幅があり、得点様式と守備のアングルに影響します。
あなたが観戦者なら「ここは長めのインゴールだ」と気づくだけで、キックの選択やチェイスの厚みの意味が腑に落ちます。選手やコーチは、終盤のゲームマネジメントにここを織り込みましょう。
短いインゴールの特徴
短いインゴールではキック後の再加速が難しく、グラウンディングの余白が小さいためノックオンやタッチインゴールの頻度が上がります。守備側のプレッシャーは小さな角度変化でも効果的です。
アタックはキックの高さやバウンドの質を精密に設計し、ハンドリングのリスクと得点期待の均衡を合わせ込みます。密集の二次加速より、初速の質が勝敗を左右します。
長いインゴールの特徴
長いインゴールはキッカーに余白を与え、ボール保持側が追いついてボールを押さえる選択肢が増えます。守備側は最終ラインの背走距離が伸び、体力と認知の負荷が高まります。
アタックは「蹴る位置」と「追う人数」をセットで設計し、ラインスピードと連動させます。守備はカバーの角度と背走のスタート合図を共通化しておくと安心です。
デッドボールライン際の判断
デッドボールラインを越えればプレーは止まり、再開方法が定まります。押し込むのか止めるのかの判断は、奥行きの把握と背後の安全帯の取り方で微妙に変化します。
動画での事後検証では、ラインの位置の認識ミスが意思決定の遅れにつながる事例が散見されます。試合前のウォークスルーで実際に走って確かめてみましょう。
インゴールの養生と視認性
芝目や人工芝の継ぎ目はボールの転がりに影響します。色分けやロゴがある場合、視認性を落とさない配置でラインを保ち、グラウンディングの判定を助けます。
雨天後はスリップが増え、タッチダウンの瞬間に手首や肩への負担が高まります。芝の含水と排水の状況をキックオフ前に共有すると選択が洗練されます。
ラグビーコートのサイズとゴールポスト・キックの基礎寸法

ポスト寸法はキックの価値を数センチ単位で変えます。ラグビーコートのサイズの文脈では、ゴールポストの間隔とクロスバーの高さ、ポストの上方高さが基準として定められています。
観戦の視点では「どれくらい上を通ったのか」を具体の数値で把握できると楽しさが増します。キッカーや指導者は、助走角度と弾道をこれらの寸法に合わせて設計していきましょう。
ゴールポストの間隔とクロスバー
ゴールポスト間の距離は5.6メートルで、地面からクロスバー上端までが3メートルです。クロスバーの厚みを加味しても、判定の基準はこの高さが拠り所になります。
クロスバー直上は視差が出やすいため、主審とアシスタントの位置関係も弾道の評価に影響します。スタジアムの角席からの見え方を頭に入れておくと納得感が増します。
ポストの上方高さと安全配慮
ポストはクロスバーから上に少なくとも3.4メートル以上を確保する基準があり、弾道が高いキックでも判定が可能になります。強風時の揺れや支柱固定の状態も判断の安定に寄与します。
安全パッドは衝突時のダメージ軽減に不可欠で、雨天や冷え込みで硬度が変わる点も考慮します。写真映えより安全優先で厚みを選ぶのがおすすめです。
キックの設計と寸法の活用
3メートルの基準線は助走の角度設計に直結します。短い助走で強い回転を与えるのか、長い助走で安定バランスを狙うのか、弾道と風の関係を数値化して再現性を高めます。
左右5.6メートルの幅は「どこを通すか」の言語化を助けます。狙いを三分割で共有し、外に切れるキックと内に戻るキックで基準点を分けると実戦で生きます。
ラグビーコートのサイズの年代別・セブンズ運用と現場の最適化
同じ基準でも年代や形式で運用が変わる場面があります。ラグビーコートのサイズは19歳未満の規則や7人制の競技規則で、人数や安全の観点から運用差が設けられることがあります。
学校や地域クラブでは用地や設備の事情も加わります。公式試合と日常練習の間で、どこを固定しどこを弾力運用するかを決めておくと現場が回りやすくなります。
19歳未満の標準競技規則の見方
19歳未満のカテゴリーでは、セットプレーの安全規定などに合わせてライン運用や組織の仕方が整理されています。大枠のサイズは同じ概念で読み替え、接触局面の強度を調整します。
幅や奥行きの極端な設定は避け、視認性と集合のしやすさを優先するのが実際的です。指導では「線の意味」を減らさずに密度だけを落とす考え方が有効です。
7人制(セブンズ)の実務
7人制は基本的に同じコートを使用しますが、競技進行や選手密度の観点からライン運用のテンポが変わります。スピードが上がる分、5メートルや15メートルのガイドが判断の助けになります。
インゴールの奥行きは同じ許容内で扱われ、再開や認定のルールは競技変種の条項に委ねられます。試合進行が速い大会では、ラインの再描画タイミングもあらかじめ決めておきましょう。
地方会場・学校グラウンドの工夫
常設の国際規格が難しい会場では、短辺やインゴールを許容範囲内で調整しつつ安全帯を最優先に確保します。観客導線の分離と車両動線の制御も合わせて設計します。
複数競技での共用はライン色を変えるだけでなく、不要線の消し方を工夫して視認性を守ると良いです。臨時の案内板でも線の意味を一目で共有できるようにしましょう。
ラグビーコートのサイズに基づく設営・点検フレーム(現場用)
サイズを知識で終わらせないために、設営当日のフレームを共有します。ラグビーコートのサイズは「測って描いて確かめる」を一筆書きにするほど、誤差の入り込む余地が減ります。
ここでは事前準備から本描き、最終点検の三段でタスクを並べます。役割を固定し、チェックは交差で行う運用にすると、忙しい日でも質が安定していきます。
事前準備(前日まで)
- 中央点とゴールライン起点の杭打ちと養生。
- 距離計・テープ・チョーク・ペンキの残量確認。
- 予備の糸・スプレー・パッドの準備。
- 照明下の視認性テスト用の仮線。
- 安全帯の障害物撤去計画。
- ライン担当と計測担当の役割分担表。
- 悪天候時の延期・短縮手順の合意。
本描き(当日朝)
- 長さ(ゴールライン間)→幅→10m・22mの順で描画。
- 5m・15mは左右タッチから同時に入れる。
- インゴールは奥行きの両端で誤差を見合う。
- 曲がりは対角線で補正して直角を守る。
- ゴールポスト周りは最後に安全パッド装着。
- デッドボール側の広告や設備の退避確認。
- ラインアウト想定位置で視差の最終確認。
最終点検(キックオフ前)
- 10mキックの到達判定が全員同じに見えるか。
- 22m内外のジャッジラインの見えを合わせる。
- タッチ際の5m・15mの濃度と連続性。
- インゴールの滑りやすさと色ムラ。
- 安全帯5mの連続確保と導線の分離。
- クロスバー3mとポスト間5.6mの再視認。
- 審判・両主将と共有し修正の余地を残す。
まとめ
ラグビーコートのサイズは「フィールドの最大値」「インゴールの許容」「安全帯」の三層を同じ地図で理解すると、戦術や観戦の判断が揺らぎません。コーチとしてはゴールライン間100m・幅70m・インゴール6〜22m、ポスト間5.6m・クロスバー3mを基準に、ラインの意味と計測手順をチームの共通言語にしておくと現場が整います。実務では安全帯の5m確保と視認性の点検を優先し、年代やセブンズの運用差は原則を崩さずに弾力運用するのが要点です。次の練習設営で、ここまでのフレームを小さく試してみませんか?



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