笛が鳴った直後に腕が伸び、胸前で合図が切り替わる、その一瞬で試合の意味が決まります。レフリーのジェスチャーを正しく受け取れれば、観戦も練習も判断の速度が上がり、チーム全員の認識がそろいやすくなります。どの合図が何を示し、次に何が起こるのか、あなたは自信を持って説明できますか?
本記事ではラグビーのレフリージェスチャーを、一次シグナル(決定の種類)と二次シグナル(理由の説明)に分けて整理します。最後にチェックリストを添えるので、練習前の5分で確認できる形で活用してみましょう。
- 一次シグナルと二次シグナルの関係を押さえる。
- 反則の系統別に“次の再開”を結び付けて覚える。
- 時間管理とスコアの合図は試合の流れに直結。
- 危険なプレーのジェスチャーは安全管理の要。
- ラグビーのレフリーのジェスチャー基礎|一次と二次をつなげて判定の道筋を読む
- ラグビーのレフリージェスチャーを反則系統で整理|再開方式とセットの素早い選択がおすすめです
- ラグビーのレフリージェスチャーとスクラム・ラインアウト|セットプレーの要点を段取りで整えていきましょう
- ラグビーのレフリージェスチャーとオフサイド・アドバンテージ・時間管理|リズムを合わせることが安心です
- ラグビーのレフリージェスチャーと危険なプレー|安全を守る合図を最優先に捉えるのがおすすめです
- ラグビーのレフリージェスチャーとスコア・交代・カード|運営の可視化で混乱を減らしていきましょう
- ラグビーのレフリージェスチャー活用チェックリスト|合図→再開→行動の順で整理してみましょう
- まとめ
ラグビーのレフリーのジェスチャー基礎|一次と二次をつなげて判定の道筋を読む
最初に、レフリーのジェスチャーは「一次シグナル=何を与えるか」「二次シグナル=なぜそれを与えるか」の二段構成で示されることを整理しておきます。一次でスクラム・ペナルティ・フリーキック・ラインアウト・トライなどの“決定”を伝え、続けて二次でノックオンやハイタックル、オフサイドなど“理由”を示します。
観戦者も選手も、一次を見た瞬間に“次の再開”を予測し、二次を見て“修正ポイント”を共有できると強いです。ここをつなげて理解していきましょう。
一次シグナルの全体像をつかむ
一次は試合再開の枠組みを決めます。スクラムは両拳を前で合わせる、ペナルティは胸前から斜め上に片腕を伸ばす、フリーキックは肩の高さで腕を水平に伸ばす、といった具合です。合図が見えたら、次のセットアップを素早く組み立てます。
リスタートの準備が速いと、相手より一拍早く前進が始められます。観戦でも「いま何が与えられたか」を言語化してみると、展開が鮮明になります。
二次シグナルは“理由の辞書”として使う
二次は、ノックオン・スローフォワード・ハイタックル・オブストラクション・オフサイドなど、反則類型を指示します。一次で枠を、二次で原因を特定し、次のプレーで改善します。
二次は種類が多いので、分類別にまとめて覚えるのが近道です。後段の表で再確認してみましょう。
視線と腕の向きで“どちらのボールか”を読む
一次シグナルは、勝者側の方向に腕が向きます。片腕の斜め上はペナルティで、上げる側が権利チームです。スクラムやラインアウトでも同様に、向きでボール保持側を示します。
向きが読めるだけで、陣取りとキック選択の予測が立ち、観戦でも先回りの理解が可能になります。
笛→ジェスチャー→前進/後退の順序を揃える
笛の強弱とジェスチャーのキレは、レフリーの意図や危険度のサインでもあります。強い笛と明確なペナルティは、即時の距離確保や接触回避が求められる場面だと捉えましょう。
練習では、合図が出た瞬間に前進か後退かの役割を声に出すと、全員の動きがそろいます。
主審・アシスタント・TMOの役割を知っておく
レフリーは一次と二次を主に担当し、アシスタントレフリーはタッチと前方/後方の視野補助、TMOは映像確認を通じて危険なプレーやトライ判定を補強します。誰の合図が優先かを理解しておくと混乱を減らせます。
観戦でも旗の上がり方や無線交信の様子から、裏で起きている合意形成を想像できると、判定までの流れが見えてきます。
| 区分 | 合図の要点 | 次の展開 | 観戦の着眼点 |
|---|---|---|---|
| 一次 | スクラム/ペナルティ/フリー/ラインアウト | 再開の方式が決まる | 腕の向き=権利側 |
| 二次 | 反則の種類・安全関連 | 修正点と警告が明確 | 原因とリスクの把握 |
| 補助 | 時間/交代/スコア | 試合運営の調整 | 流れの切替タイミング |
まずはここまでの枠組みを言葉にして共有してみましょう。チームで“同じ見取り図”を持てると、次の細部の理解が一段と進みます。
基礎の確認ができたら、反則系統別にレフリーのジェスチャーを読み解き、再開と結び付ける練習をしていきましょう。
ラグビーのレフリージェスチャーを反則系統で整理|再開方式とセットの素早い選択がおすすめです

反則は大きく、タックル・ラック/モール・オフサイド・一般プレーの危険行為に分けて考えると整理しやすいです。ジェスチャーを見た瞬間に、スクラムかペナルティかフリーキックかを選び、次の一手へ即時に接続しましょう。
次の表で、代表的な二次シグナルと再開の関係をひと目で確認できます。練習前のホワイトボードにも流用してみましょう。
| 反則類型 | 代表ジェスチャー | 主な意味 | 典型再開 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| タックル | 首周りを示す/腕で抱え上げ示唆 | ハイタックル/危険な持ち上げ | ペナルティ | 接触高・力の向き |
| ラック/モール | 横からの侵入を示す | サイドエントリー/離さない | ペナルティ | 離す/離れないの判断 |
| ノックオン | 手を前方に示す | 前方への落球 | スクラム | 利得あればアドバンテージ |
| スローフォワード | 前方投げの方向を示す | 前へのパス | スクラム | 接戦では見落とし注意 |
| オブストラクション | 進路妨害を示す手振り | 盾走り/ブロック | ペナルティ | ボール保持者の位置 |
| オフサイド | ライン後方を指す | 前方でプレー/干渉 | ペナルティ/フリー | キック時の位置関係 |
表のとおり、危険や不正利得に直結する反則はペナルティへ、単純な技術ミスはスクラムへつながる傾向があります。例外はありますが、この“流れ”を先に掴んでおくと判断が整います。
ここで疑問が出やすいのは「アドバンテージの終わりどき」です。二次で反則を示しつつ腕を前に伸ばす合図が続く間はプレー継続で、利得がなければ最初の反則に戻るので、声出しで共有していきましょう。
- ペナルティは距離獲得が大きいので選択肢の幅が広い。
- スクラムはボール確保とセットの安定が焦点。
- フリーキックはテンポを上げたい場面で有効。
- アドバンテージは“利得の実感”が判断軸。
分類で覚えると、実戦での迷いが減ります。次はセットプレーのジェスチャーに焦点を当て、細部まで合わせていきましょう。
再開方式と二次の理由をワンセットで口に出す練習を、今日から取り入れてみましょう。
ラグビーのレフリージェスチャーとスクラム・ラインアウト|セットプレーの要点を段取りで整えていきましょう
セットプレーは、スクラムとラインアウトの段取りを理解しているだけで対応が一気に速くなります。レフリーのジェスチャーは、形成・投入・反則の各段階で明確に示されるので、段取りのどこで止まったのかを言い当てられるようになりましょう。
ここでは場面別に、よく出るシグナルをまとめ、次の行動へつなげます。
スクラム形成の合図と反則
スクラムの一次シグナル(両拳を前で合わせる)を確認したら、セット位置と角度を素早く合わせます。早すぎる押し出しやコラプシングは、腕を下に引き落とすなどの合図で示され、ペナルティとなります。
フッカーの打音に集中しつつ、プロップの高さを一定にする意識を統一しましょう。
ラインアウト投入と“ノットストレート”
ラインアウトでは、スロワーの肩の線に沿った投入が求められます。ノットストレートは、腕でラインを示す二次シグナルで伝えられ、相手側の選択でスクラムかラインアウト継続になります。
プランドムーブの合図を短くし、肩・腰・足の一直線を全員で再現する意識が重要です。
リフティングとサポートの安全合図
リフターの手や肩の位置が危険になると、危険行為を示す二次シグナルで指摘されます。落下時の安全配慮が不足していれば、ペナルティや制裁につながります。
安全を最優先に、ジャンパーの降下をコントロールする声掛けを徹底しましょう。
セット前の位置取りと10メートルの管理
ラインアウトのディフェンス側は、10メートル後退の管理が入ります。レフリーは腕で距離や後退を示し、前に出るタイミングを明確化します。
早出でアドバンテージを与えないよう、しるしの位置を全員で共有する手順がおすすめです。
スクラムからのオフサイドとナンバーエイト管理
スクラム後方のオフサイドは、ラインを指し示すジェスチャーで警告されます。投入側の球出しのテンポを守るため、後方の位置と離れ方に注意します。
セットの段取りが決まっていれば、細かな反則を予防できます。段取りの共有を合図とセットの両面から磨いていきましょう。
- スクラムは高さ・角度・タイミングの三本柱。
- ラインアウトは肩線・距離・降下の三条件。
- 安全配慮の不足は即座にペナルティ対象。
- 段取りの言語化が再現性を高めます。
セットプレーは練習量が結果に直結します。ジェスチャーの意味と段取りを同時に確認し、迷いを減らしていきましょう。
続いて、オフサイドとアドバンテージ、時間管理の合図をまとめます。これらは試合のリズムそのものです。
ラグビーのレフリージェスチャーとオフサイド・アドバンテージ・時間管理|リズムを合わせることが安心です

ゲームマネジメント系のジェスチャーは、試合のリズムを整える鍵です。オフサイドのライン指示、アドバンテージの腕伸ばし、時間停止や再開のシグナルは、それぞれ次の行動の準備時間を作ります。
ここを取り違えると、良い守備も無駄走りになりがちです。合図を見て、チーム全員で呼吸を合わせましょう。
オフサイドの合図と戻り方
オフサイドはラインの後方を指し示す二次シグナルで注意され、度重なる場合はペナルティになります。戻る際は最短でゴールライン側へ退くことが求められます。
キック時はキッカーより前にいた選手の関与が焦点です。位置関係の言語化を普段から行いましょう。
アドバンテージの開始と終了
腕を前方に水平に伸ばすのがアドバンテージ継続の合図で、レフリーは「続行」を示しています。利得が十分でなければ最初の反則へ戻り、十分なら「アドバンテージオーバー」の合図で通常進行に戻ります。
攻撃側は継続の合図が見えたら、リスクを抑えつつ展開の加速を図りましょう。守備側はペナルティを重ねないよう接触高を即時修正します。
時間停止・再開とプレースキック
時計に手を向ける合図で時間停止を示し、再開は同じ動作の逆で知らせます。プレースキック時は、準備合図と時間管理が明確になるため、リスタートまでの段取りを整えます。
時間系のジェスチャーは、試合終盤の意思決定を左右します。残り時間を声に出し、無理のないオプション選択につなげましょう。
| 管理項目 | ジェスチャー | 意味 | 実務のポイント |
|---|---|---|---|
| オフサイド | ライン後方を指す | 位置違反の警告 | 最短で後退し関与停止 |
| アドバンテージ | 腕を前に伸ばす | 利得があれば継続 | リスク管理と加速 |
| 時間停止 | 手で時計を示す | プレー一時停止 | 段取りと呼吸の統一 |
ゲームマネジメントが整うと、無駄な反則や焦りが減り、良い局面を増やせます。観戦でも、合図でテンポの変化を先に感じ取れます。
次は、安全に直結する危険なプレーのジェスチャーに焦点を当てます。ここは優先度が最上位です。
ラグビーのレフリージェスチャーと危険なプレー|安全を守る合図を最優先に捉えるのがおすすめです
危険なプレーのジェスチャーは、接触の高さ・力の方向・地面への落とし方など、選手の健康に直結する要素を示します。理解が曖昧だと、練習でも悪い癖が残りやすく、試合での制裁リスクが高まります。
安全の合図を、チームの合言葉に置き換えるつもりで共有していきましょう。
ハイタックルの合図と修正
首や肩口を手で示す合図は、ハイタックルの警告です。接触高の是正と包み込む角度の修正が即時に必要になります。
身長差がある場面では特に、最初の接触点を胸より下へ、というシンプルなルールを徹底します。
危険な持ち上げ・タックルの合図
持ち上げや回転方向が危険だと、腕の動きで危険性を示す二次シグナルが出ます。地面への落下を制御できない形は重大です。
支える側の手の位置と、落下時の声掛けにルールを作っておくと、再現性が上がります。
オブストラクションと接触前の妨害
進路妨害は、相手のラインに手で壁を作るような合図で示されます。ボール保持者の前に立っての盾走りは、危険回避の観点でも抑止されます。
味方の動線を守るスクリーンの設計は、規則内の駆け引きに絞るのが賢明です。
- 接触高=胸より下、角度は前方から包む。
- 落下は“支える手”まで設計する。
- 妨害はボール保持者の位置で線引き。
- 迷ったら安全優先で距離を取る。
安全の合図は、勝敗よりも重い前提条件です。ここが習慣化できるチームは、長期で強くなります。
続いて、スコアと交代・カードのジェスチャーをまとめ、運営上の誤解を減らします。
ラグビーのレフリージェスチャーとスコア・交代・カード|運営の可視化で混乱を減らしていきましょう
スコアリングや交代、警告・退場のジェスチャーは、観客にも分かりやすい“見せる運営”の要素です。トライの合図、コンバージョンの成否、ペナルティゴールやドロップゴールの確認、交代や一時的退出のサインが迅速に示されます。
ここが不明瞭だと、スコアボードの反映や選手交代の段取りで混乱が生じます。合図の意味をチームスタッフ全員が共有しておきましょう。
トライ・コンバージョン・ドロップゴールの合図
トライは地面方向を示す明確な合図で宣言され、コンバージョンの成否はゴールジャッジの腕で示されます。ドロップゴールやペナルティゴールは、成功の合図で即座に再開の準備へ移ります。
キッカーとボールパーソンの連携を、合図に合わせて段取り化すると時間のロスが減ります。
交代・一時退出とカード
交代は番号を示す合図で周知され、一時退出はジェスチャーでベンチを指し示し、合わせてイエローカードの掲示で時間管理が始まります。レッドカードは退場の合図として最も明確です。
カードが出た瞬間に、残り時間と守備人数を再計算する体制を作ると、混乱を小さくできます。
TMOの関与と合図
映像確認の合図は、四角形を描くジェスチャーで共有されます。トライ前のノックオンや危険なプレーの疑いなど、重大性に応じて確認が行われます。
観戦側も、この合図が出たら一旦プレーの連続性より根拠の検証が優先される、と覚えておくと納得感が高まります。
| 項目 | ジェスチャーの例 | 意味 | 現場の要点 |
|---|---|---|---|
| トライ | 地面方向を指す | 得点の宣言 | キック準備へ即移行 |
| カード | 黄/赤の掲示 | 一時退出/退場 | 時間と人数管理 |
| TMO | 四角形の合図 | 映像確認の実施 | 根拠の検証を優先 |
運営のジェスチャーが見えると、試合の裏側の仕組みが理解できます。結果だけでなく、過程の透明性が観戦の納得につながります。
最後に、練習や観戦前に使えるチェックリストをまとめます。短い時間で確認できる形にしました。
ラグビーのレフリージェスチャー活用チェックリスト|合図→再開→行動の順で整理してみましょう
試合前の5分で、次の項目を声に出して確認しておくと、意思決定の速さが変わります。合図→再開→行動、の順番をチームでそろえるのが狙いです。
観戦でも、合図から一歩先のプレーを“予測実況”できると、理解がぐっと深まります。
- 一次シグナルを言語化できる(スクラム/ペナルティ/フリー/ラインアウト)。
- 二次シグナルの代表例を三つ言える(ノックオン/ハイタックル/オフサイド)。
- アドバンテージ継続中の狙いを共有できる(リスク低/速度高)。
- 時間停止/再開のジェスチャーで段取りを切替えられる。
- 危険なプレーの合図は全員が同じ対応を取れる。
- セットプレーの段取りを合図と一緒に復唱できる。
- カード提示時の再配置と時間管理の役割が明確。
| 合図 | 次の再開 | 行動の例 | 声掛けの例 |
|---|---|---|---|
| ペナルティ | PK/タッチ/ショット/速攻 | 素早い選択と配置 | 「距離確保、選択確認」 |
| スクラム | セット→投入 | 高さと角度の統一 | 「角度一定、押し急がない」 |
| フリー | テンポ再開 | クイック狙い | 「合図で一拍速く」 |
| アドバンテージ | 継続→オーバー/戻り | リスク管理 | 「続行、無理しない」 |
チェックリストは、紙でも端末でも構いません。練習の最初と最後に確認すると、定着が速まります。
合図の意味がそろえば、判断の速度と質がそろいます。小さな共有を重ねて、試合のリズムを自分たちのものにしていきましょう。
まとめ
レフリーのジェスチャーは一次と二次の二段構成で、合図→再開→行動の順に結び付けると試合が立体的に見えてきます。危険なプレーの合図は最優先で共有し、接触高や角度の修正を即時に行いましょう。規則の区分と再開の対応を表で確認しておくと、観戦も練習も迷いが減ります。近年の競技規則では安全関連の基準が一層明確化されているため、接触の高さと落下制御の意識を高く保つことが成果につながります。
“`Sources: World Rugby『ラグビー競技規則 2024(日本語版)付録:レフリーシグナル』該当ページ(レフリーシグナル総覧、スクラム/ラインアウト/反則・安全/時間管理・スコア等)。 また、一次シグナルと二次シグナルの区別・運用の説明として“Rugby union match officials”の該当記述を参照。
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