明治大学ラグビー部頂点へ!神鳥裕之監督が貫いた『完遂』と常勝軍団への道とは?

rugby ball (24) 高校大学ラグビー

2026年1月、国立競技場に歓喜の紫紺の歌声が響き渡りました。第62回全国大学ラグビーフットボール選手権大会において、明治大学ラグビー部は帝京大学や早稲田大学といった強豪との激闘を制し、見事に7大会ぶり14度目の大学日本一の栄冠を手にしました。

この復活劇の中心にいたのは、就任5年目を迎えた神鳥裕之監督です。「前へ」という伝統を継承しつつ、現代ラグビーに適応した「ハイブリッド重戦車」を作り上げた指揮官の手腕は、大学ラグビー界に新たな衝撃を与えました。

本記事では、神鳥監督がいかにしてチームを再建し、頂点へと導いたのか、その指導哲学と戦術の全貌に迫ります。

項目 詳細内容
監督名 神鳥 裕之(かみとり ひろゆき)
就任年 2021年(創部100周年時)
2025年度戦績 大学選手権 優勝(7大会ぶり14回目)
スローガン 『完遂』(2025年度)

明治大学ラグビー部を変革した神鳥裕之監督の『凡事徹底』とは

明治大学ラグビー部という伝統ある組織を率いることは、並大抵のプレッシャーではありません。しかし、神鳥裕之監督はその重圧を力に変え、着実にチームを変革してきました。就任当初から掲げている「凡事徹底」の精神は、どのようにして選手たちに浸透し、今回の日本一という結果に結びついたのでしょうか。ここでは、神鳥監督のバックグラウンドと指導哲学の核心を深掘りしていきます。

リコーブラックラムズでの指導経験と実績

神鳥裕之監督の指導者としての原点は、社会人ラグビーの強豪・リコーブラックラムズ(現・リコーブラックラムズ東京)にあります。2013年から8シーズンにわたり指揮を執り、トップリーグ(現・リーグワン)でのチーム最高位や最多勝利数を更新するなど、確かな実績を残しました。

プロ選手と社員選手が混在する社会人チームでのマネジメント経験は、多様な背景を持つ学生たちをまとめる上での大きな武器となっています。組織としての規律を保ちながら、個々の能力を最大限に引き出す手腕は、この時期に培われたものです。

創部100周年の重圧と監督就任の覚悟

2021年、明治大学ラグビー部が創部100周年を迎えるという記念すべき年に、神鳥監督は母校の指揮官に就任しました。「大学日本一を取り戻す」「常に優勝を争うチームにする」というミッションは、OBやファンの期待を一身に背負うものでした。

就任会見で語った「明治のプライドを取り戻す」という言葉通り、彼は伝統を尊重しながらも、聖域なき改革に着手しました。過去の栄光にすがるのではなく、現代のラグビーで勝てる組織への脱皮を図ったのです。

「自立」と「自覚」を促す指導哲学

神鳥監督が最も重視するのは、選手一人ひとりの「自立」です。グラウンド上で判断するのはあくまで選手自身であり、指示待ちの人間では勝負どころで通用しないという考えがあります。

そのため、練習メニューの意図を選手自身に考えさせたり、寮生活における規律(タイムマネジメントや整理整頓)を徹底させたりしています。ラグビー選手としてだけでなく、一人の人間としての成長を促す姿勢が、チーム全体の底上げに繋がっています。

選手と同じ目線に立つコミュニケーション

かつての「監督は絶対」というトップダウン型の指導とは異なり、神鳥監督は選手との対話を大切にします。特に、リーダー陣とは頻繁にミーティングを行い、チームの方向性や戦術について徹底的に議論を重ねます。

2025年シーズンのスローガン決定の際も、4年生を中心とした学生たちの意見を尊重しました。指揮官が一方的に決めるのではなく、学生たちが納得して決めた目標だからこそ、苦しい場面でもチームが崩れることなく結束できたのです。

悲願の日本一をたぐり寄せた『完遂』の精神

2025年度のスローガン『完遂』には、「やり切る」「最後まで徹底する」という強い意志が込められていました。前年度、あと一歩で優勝を逃した悔しさを糧に、ワンプレー、ワンタックル、そして私生活の細部に至るまで「完璧に遂行する」ことを求め続けました。

決勝戦の後半、相手の猛攻を受けながらも規律を守り抜き、最後の一瞬まで集中力を切らさなかった姿は、まさにこのスローガンが体現された瞬間でした。神鳥監督が植え付けた精神的タフネスが、7年ぶりの歓喜をもたらしたのです。

伝統と革新の融合『ハイブリッド重戦車』の戦術分析

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明治大学ラグビー部の代名詞といえば「重戦車」ですが、神鳥裕之監督が目指したのは、単に体が大きく力が強いだけのチームではありません。現代ラグビーの高速化・複雑化に対応するため、伝統のフィジカルに「速さ」と「判断力」を加えた『ハイブリッド重戦車』の構築を進めてきました。ここでは、日本一を支えた戦術的な進化について分析します。

セットプレーの圧倒的優位性と安定感

明治の生命線であるスクラムとラインアウトは、神鳥体制下でさらに洗練されました。単に重量で押すだけでなく、相手の組み方に合わせた修正能力や、8人全員が意思統一して組む「まとまり」を強化しました。

2025年度の大学選手権決勝でも、ここぞという場面でのスクラムでペナルティを奪い、試合の流れを決定づけました。セットプレーの安定が、後述するアタックの選択肢を広げる基盤となっています。

エリアマネジメントと堅牢なディフェンス

「前へ」の精神はディフェンスにも表れています。相手のアタックに対して受けて立つのではなく、前に出てプレッシャーをかけ続ける「シャローディフェンス」を磨き上げました。これにより、相手の判断時間を奪い、ミスを誘発することに成功しています。

また、キックを使ったエリアマネジメントも徹底されました。自陣でのリスクを冒さず、敵陣に入ってからフィジカルバトルを挑むという、勝つための「賢いラグビー」が浸透したことが、接戦を勝ち抜く要因となりました。

FWとBKが一体となったアタックオプション

従来の明治はFWに依存する傾向がありましたが、現在はBKの展開力も大学トップクラスです。FWが中央で相手ディフェンスを集め、空いたスペースをBKがスピードで攻略する、あるいはその逆のパターンなど、攻撃のバリエーションが飛躍的に増えました。

特に、FWの選手にも高いハンドリングスキルやランニングスキルを求めたことで、どこからでも突破できる「的を絞らせないアタック」が可能になりました。これが『ハイブリッド』と呼ばれる所以です。

2025年度優勝メンバーと平翔太主将のリーダーシップ

神鳥裕之監督の戦術をピッチ上で体現したのは、才能溢れる選手たちでした。特に2025年度は、主将の平翔太選手を中心に、個性の強いメンバーが見事に融合したシーズンとなりました。ここでは、優勝の原動力となった主要メンバーと、チームをまとめたリーダーシップについて紹介します。

チームを牽引した主将・平翔太の存在

東福岡高校出身のCTB平翔太主将は、プレーと背中でチームを引っ張るリーダーでした。「言葉よりも行動で示す」タイプであり、誰よりも激しいタックルと献身的なプレーで仲間の信頼を勝ち取りました。

神鳥監督も平主将に全幅の信頼を寄せ、ピッチ上の判断を彼に委ねることが多くありました。苦しい時間帯にチームがバラバラにならなかったのは、主将の揺るぎない統率力があったからこそです。

FWの核となった物部耀大朗と亀井秋穂

『ハイブリッド重戦車』のエンジンとなったのが、LO/No.8の物部耀大朗選手と、LO亀井秋穂選手です。物部選手は日本代表のエディー・ジョーンズHCからも注目される逸材で、その突破力とラインアウトの支配力は圧巻でした。

また、亀井選手もU23日本代表としての経験を活かし、接点での激しいファイトと運動量でチームを鼓舞し続けました。彼らを中心としたFWパックは、学生界最強の呼び声にふさわしい働きを見せました。

竹之下仁吾・海老澤琥珀らBK陣の決定力

FWが作ったチャンスを確実に得点に結びつけたのが、タレント揃いのBK陣です。特に日本代表キャップを持つFB竹之下仁吾選手の安定感とカウンターアタックは、相手チームにとって最大の脅威となりました。

WTB海老澤琥珀選手の爆発的なスピードと決定力も光り、ワンチャンスをものにするトライを量産しました。彼らの個人技と、組織的なアタックが噛み合ったことが、大量得点を生む源泉となりました。

優秀な人材が集まる理由とスカウティング戦略

明治大学ラグビー部が常に強豪であり続ける背景には、高校ラグビー界のトップ選手が集まるリクルート力があります。しかし、単に有名選手を集めるだけでなく、神鳥裕之監督の明確な戦略に基づいたスカウティングが行われています。なぜ、有望な高校生たちは明治を選ぶのでしょうか。

高校日本代表クラスが共鳴する「明治の魅力」

明治大学には、毎年多くの高校日本代表経験者が入学します。その最大の理由は、「伝統への憧れ」と「日本一に近い環境」です。紫紺のジャージを着て国立競技場でプレーすることは、多くの高校ラガーマンにとっての夢であり続けています。

加えて、神鳥監督就任以降は「プロでも通用する育成システム」が確立されたことも魅力です。大学4年間でフィジカル、スキル、メンタルを高いレベルで鍛え上げられる環境は、将来の日本代表やリーグワンを目指す選手にとって最適の場所となっています。

1年生から活躍できる実力主義の土壌

明治大学は上級生中心のチームというイメージがあるかもしれませんが、神鳥体制では完全な実力主義が敷かれています。2025年度も、SH後藤快斗選手やFB古賀龍人選手といったルーキーが重要な試合で起用され、優勝に貢献しました。

学年に関係なく、パフォーマンスが良い選手にはチャンスを与えるという方針が、チーム内の競争を活性化させ、全体のレベルアップに繋がっています。「自分も1年から紫紺を着て活躍したい」という野心が、有力な新人を引き寄せています。

人間的成長を促す育成システム

スカウティングの際、神鳥監督はプレーのスキルだけでなく、人間性やリーダーシップの資質も重視しています。ラグビーだけでなく、学業や寮生活を通じて社会で通用する人間を育てるという方針に、保護者や高校の指導者からも厚い信頼が寄せられています。

卒業生がリーグワンの各チームや一般企業でリーダーとして活躍している実績も、明治ブランドの価値を高め、次世代の才能が集まる好循環を生み出しています。

大学王者として迎える新時代の展望と課題

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7大会ぶりの大学日本一を達成し、名実ともに大学ラグビー界の頂点に立った明治大学。しかし、神鳥裕之監督はすでにその先を見据えています。「勝って兜の緒を締めよ」の言葉通り、王座を守り続けることは奪還すること以上に困難です。最後に、今後の展望と明治大学ラグビー部が目指すべき未来について考察します。

帝京・早稲田とのライバル関係の激化

優勝したとはいえ、ライバルである帝京大学や早稲田大学との実力差は紙一重です。特に帝京大学のフィジカル、早稲田大学の展開力は依然として脅威であり、彼らも打倒明治を掲げて猛追してくるでしょう。

追われる立場となった明治が、いかにして慢心を排し、挑戦者としてのメンタリティを持ち続けられるかが鍵となります。神鳥監督の手腕が、真の常勝軍団を作れるかどうかの試金石となるでしょう。

国際基準(グローバルスタンダード)への挑戦

神鳥監督は常々、「大学レベルで満足してはいけない」と選手に説いています。リーグワンのチームや、海外の同世代のチームと渡り合えるレベルを目指すことで、結果として大学日本一がついてくるという考え方です。

今後は、よりフィジカルの強度を上げ、ブレイクダウン(接点)での激しさを国際基準に近づけることが求められます。また、日本代表やU20代表へさらに多くの選手を送り出すことも、チームの目標の一つとなるでしょう。

「前へ」の精神を次世代へ継承し続けること

100年を超える歴史の中で培われた「前へ」の精神は、明治大学ラグビー部のアイデンティティそのものです。戦術やトレーニング方法は時代とともに進化しても、泥臭く、ひたむきに前に出る姿勢だけは変えてはなりません。

神鳥裕之監督の最大の使命は、この無形の財産を、勝利という結果とともに次の世代へ正しく継承していくことです。2026年以降も、紫紺の戦士たちが大学ラグビー界をリードし続ける姿に期待が高まります。

まとめ

神鳥裕之監督率いる明治大学ラグビー部は、伝統の重みを力に変え、『完遂』のスローガンのもとで7大会ぶりの大学日本一という偉業を成し遂げました。その背景には、確固たる指導哲学、現代的に進化した戦術、そして選手たちの自立を促すマネジメントがありました。

明治大学の復活は、大学ラグビー界全体にとっても大きな刺激となります。「ハイブリッド重戦車」の進化はまだ止まりません。私たちファンも、神鳥監督と選手たちが描く次なるドラマ、そして連覇への挑戦から目が離せません。

ぜひ、次のシーズンもスタジアムに足を運び、紫紺のジャージが「前へ」進む姿をその目で目撃してください!

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