デリバレイトノックオンの基準と裁定を理解して無駄な反則を減らす

rugby ball (30) ルールと用語

ラインを上げてパスコースに手を出した結果、笛が鳴ってしまう場面に心当たりはありませんか?勢いに任せた「はたき落とし」はチーム全体の流れを止めやすく、終盤ほど痛い失点につながります。

本稿はデリバレイトノックオン(故意のノックオン)の定義と判定、通常のノックオンとの違い、罰則や再開、境界事例の考え方を一つにまとめます。どのように判断し、どうプレーを修正すべきでしょうか。

  • 定義と判定軸を簡潔に整理し試合中の迷いを減らす。
  • 罰則と再開の流れを押さえカードやペナルティトライの条件を理解する。
  • 練習で直せる具体的行動に変換し反則の再発を防ぐ。

デリバレイトノックオンの定義と基本判定を押さえる

まず基礎となる定義です。ノックオンは手や腕で前方にボールを落とす・はたくなどして前進させたときに成立し、通常はスクラムで再開します。

一方で「意図的に前方へ手や腕でボールをはたく行為」は別扱いで、故意のノックオンとしてペナルティの対象です。

通常のノックオンとの違い

通常のノックオンは不注意や処理ミスに起因し、再開は相手ボールのスクラムが原則です。競技性は保たれますが試合の流れが大きく切り替わるため、ハンドリングの精度が直接スコアに跳ね返ります。

故意のノックオンは守備側の不正な利得を止める趣旨でペナルティが科されます。単なるミスではなく「わざと前にはたいたか」が分水嶺になります。

「合理的に捕れる見込み」という評価軸

故意かどうかの判断では「合理的にボールを捕れる見込みがあったか」が重視されます。両手を差し出してキャッチを試み、現実的に確保できる体勢だったなら故意とは見なされにくいという考え方です。

逆に片手で下方向へはたき落とすだけ、腕を振り払うだけの動作は「捕球の意図が薄い」と見られ、故意のノックオンの判定につながりやすくなります。

例外として故意でない扱いになるケース

相手のキックを前で防ぐチャージダウンは前方にボールが出てもノックオンではありません。これも「プレーの性質上、捕球を目的としていないが不正利得ではない」という整理です。

また相手が保持しているボールをタックル中に奪い、それが前に流れた場合もノックオンではありません。

主審シグナルと再開位置の概要

主審は前方動作を示しつつ、故意と判断すればペナルティのシグナルを示します。通常のノックオンと違い、再開は相手側のペナルティ選択(タッチキック、ゴールキック、クイックタップ等)になります。

再開の基準位置や選択肢はペナルティの一般規定に従います。

状況 手の使い方 捕球見込み 典型的判定 再開
素早いパスカットに両手で伸ばす 両手で受けに行く 十分 ノックオン 相手スクラム
パスラインを片手ではたき落とす 片手の下向き動作 低い 故意のノックオン 相手ペナルティ
キックのチャージダウン 前方で腕や体に当てる 不問 ノックオン扱いなし 続行
タックルでボールをはがし前へ 接触でこぼれる 不問 ノックオン扱いなし 続行
モール外側で腕を振り払う 手で弾くのみ 低い 故意のノックオン 相手ペナルティ
  • 故意の判断は「手の形」「腕の軌道」「体勢」「ボールの速度差」を総合で見る。
  • 捕球の意図は両手のセットや目線の追従で強く示せる。
  • リスクが高いのは縦並走での片手はたき、横からの払い。
  • アドバンテージが出てもチームの規律は帳消しにならない。
  • 終盤の自陣22m内ではカード・失点リスクが重い。
  • 練習では「最後まで両手」を合言葉に型を統一する。
  • 抗議よりも次の再開に備え素早く整列する。

デリバレイトノックオンの罰則と再開手順を理解して備える

デリバレイトノックオンの基準と裁定を理解して無駄な反則を減らす

故意のノックオンが宣告されると、再開は相手側のペナルティになります。位置は反則地点が基本で、選択肢はタッチキック、ゴールキック、クイックタップなど一般のペナルティと同様です。

ライン際では一気に陣地を失ったり、ゴールキックで3点を奪われたりと被害が拡大しやすいため、状況と点差に応じて守備戦略を即座に切り替える必要があります。

カードの可能性と判断材料

故意のノックオン自体は原則ペナルティですが、得点機会を不当に妨げたと見られる場合はイエローカード(10分間の一時的退出)が示されることがあります。

特に数的不利や外側の人数差を消す目的の「わざと落とす」行為は、反スポーツ的と受け止められ警告・一時的退出の対象になり得ます。

ペナルティトライの条件

故意のノックオンで相手の「ほぼ確実なトライ機会」が妨げられたと主審が判断した場合、ペナルティトライが与えられます。コンバージョンは蹴らず自動で7点が入るのが現在の取り扱いです。

この場合、反則を犯した選手には警告か退場が科される可能性が明記されています。終盤のゴール前で無理をしない判断は、スコア管理の観点でも重要です。

再開の選択肢と時間管理

相手はタッチキックで陣地を進めてラインアウト、もしくは速攻のクイックタップで継続攻撃を選ぶことができます。守備側はカード有無にかかわらず、ペナルティ後の最初の3フェーズで反則を重ねないことが最優先です。

ゴールキックを選ばれた場合は3点を許しても、その後のキックオフから陣形を整え直す準備を共有しておくと被害を最小化できます。

反則地点 相手の主な選択 想定失点 守備側の即応 優先メッセージ
自陣22m外 タッチキック→ラインアウト モール起点の継続 タッチ後のセット急行 「最初の跳ね返しで仕留める」
自陣22m内 ゴールキックor速攻 3点または7点 ポスト前反則厳禁 「ラック前で手を使わない」
中央〜敵陣手前 速攻クイックタップ ゲイン+継続 10m戻りとアングル管理 「内側から詰めすぎない」
外側数的不利 速攻→幅取り 外で崩壊 滑り込みの外圧縮 「最後は内肩で止める」
  • ペナルティ直後の3フェーズは守備規律のフォーカス区間に指定する。
  • カード発生時はモール防衛の人数配分を即リセットする。
  • 10m戻りの遅れによる連続反則は最も避けたい失点要因。
  • ゴールキック選択時は次のキックオフ配置を即復唱する。
  • 外側劣勢時の無理な「はたき」は失点の近道である。
  • キャプテンは理由を短く共有し感情の拡散を止める。
  • 「次のセットで取り返す」合言葉で切り替える。

境界事例で迷わないための見分け方と誤解の整理

試合では「捕れそうだったか」「結果的に前に落ちただけか」など、微妙な局面が頻繁に起きます。ここでは誤解されやすい境界事例を整理し、判定の軸をぶらさないポイントを共有します。

映像だけでは伝わりにくい「手の形」「視線」「接触タイミング」を、現場ではより具体的に読み取る習慣が役立ちます。

インターセプト狙いと「はたき」の違い

インターセプト狙いは両手でボールを包み込む動作が前提で、落としても通常のノックオンにとどまる可能性が高まります。逆に、腕を下向きに振って軌道を遮るだけの動きは捕球意図が弱く、故意の判定に傾きます。

守備側は「届かないなら出さない」を徹底し、届くと判断した瞬間に両手を前に出す癖をつけると誤判定も減らせます。

タップして上に弾く動作はどうか

上方向への軽いタップで自己確保を狙うプレー

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