青山学院大学ラグビー部は、関東大学対抗戦Aグループに所属し、長い歴史と伝統を持つ強豪校のひとつです。創部100周年という大きな節目を迎え、歴代の監督たちがどのようなチーム作りを行い、現在の強化体制へと繋げてきたのか、その系譜を知ることは青学ラグビーを深く理解する上で欠かせません。名将たちが築いた土台の上で、現在はどのような新しい風が吹いているのでしょうか。
本記事では、過去から現在に至るまでの監督たちの功績やチームの変遷を詳細に解説し、これからの青学ラグビーの展望を探ります。歴代の指導者たちが掲げたビジョンを知れば、試合観戦がより一層味わい深いものになるはずです。まずは、近年の主要な監督と特徴を整理して見ていきましょう。
- 石川安彦(現監督):2023年就任。100周年を迎えたチームを指揮し、新たな強化と改革を進める。
- 清水孝哉:2021〜2022年。OBとしてチームを率い、コロナ禍の困難な時期に基盤を固めた。
- 大友孝芳:2018〜2020年。人間形成を重視し、学生の主体性を引き出す指導を展開。
- 加藤尋久:2016〜2018年。他大学での実績を提げ、チームの強化と意識改革に着手した。
青山学院大学ラグビー部歴代監督と100年の変遷
青山学院大学ラグビー部の歴史は、数多くの指導者たちの情熱によって紡がれてきました。ここでは、主要な歴代監督とチームの歴史的な節目を振り返り、現在の体制に至るまでの流れを解説します。
主要歴代監督と在任期間一覧
青山学院大学ラグビー部の長い歴史の中で、特に近年のチーム強化に携わった監督たちを整理することは重要です。指導体制の変遷を見ることで、チームがどの時期にどのような方針転換を図ったのかが明確になります。以下の表は、2000年代以降を中心とした主要な監督とその特徴をまとめたものです。
| 氏名 | 就任期間(年度) | 主な特徴・実績 |
|---|---|---|
| 石川 安彦 | 2023 – 現在 | 100周年記念事業を推進、科学的アプローチの導入 |
| 清水 孝哉 | 2021 – 2022 | OB監督、堅守速攻のスタイルを継承 |
| 大友 孝芳 | 2018 – 2020 | 人間力の向上、「LINK」スローガンの体現 |
| 加藤 尋久 | 2016 – 2018 | 外部招聘、ディフェンス強化と意識改革 |
| (体制移行期) | 2010 – 2015 | BグループからのA昇格と定着への模索 |
この表からも分かるように、近年は数年ごとに体制を刷新しながら、常に新しい強化策を取り入れていることが特徴です。特に2016年の加藤氏招聘以降、外部の知見を積極的に取り入れる傾向が強まっています。
創部1924年からの歩みと初期の指導体制
青山学院大学ラグビー部は1924年(大正13年)に創部され、日本の大学ラグビー界でも屈指の歴史を誇る古豪です。初期の指導体制に関する詳細な記録は多くありませんが、学生主体のアマチュアリズムを重んじる気風が強く、OBたちがコーチとして後輩を指導する伝統が長く続いていました。戦前から戦後にかけての混乱期にも、ラグビーを通じた人格形成という教育理念は脈々と受け継がれてきたのです。
昭和の時代に入ると、関東大学対抗戦での順位争いが激化し、専任の指導者を置く必要性が高まってきました。この時期、チームはAグループとBグループを行き来することも多く、安定した成績を残すための組織作りが課題となっていました。多くのOB指導者が手弁当でグラウンドに立ち、青学ラグビーの魂を次世代へと繋いでいった時代と言えるでしょう。
大学選手権出場を果たした1990年代の躍進
1990年代に入ると、青山学院大学ラグビー部は一つの黄金期を迎え、大学選手権への出場を果たしました。特に1993年度と1994年度は、激戦の関東大学対抗戦を勝ち抜き、全国の舞台へと駒を進める快挙を成し遂げています。当時のチームは、決して体格に恵まれていたわけではありませんが、スピードと展開力を武器に強豪校とも互角に渡り合いました。
この時期の指導者たちは、フィジカル面での劣勢を補うために、独自の戦術と徹底したフィットネス強化を行いました。結果として、大学選手権の初戦で大東文化大学などの強豪と対戦し敗れはしたものの、全国に「青学」の名を轟かせることに成功しています。この時代の成功体験は、その後のチーム作りにおける一つの指標となり続けています。
Aグループ定着への苦闘と入替戦の歴史
2000年代以降、大学ラグビーのレベルが急激に向上する中で、青山学院大学はAグループ残留をかけた厳しい戦いを強いられるようになりました。2008年には立教大学に入替戦で敗れ、Bグループへの降格という屈辱も味わいましたが、2010年には全勝優勝でAグループへの復帰を果たしています。この激動の時期、監督たちは選手のメンタルケアと戦術の再構築に奔走しました。
入替戦というプレッシャーのかかる試合を繰り返す中で、チームには「絶対に諦めない」という粘り強さが育まれていきました。当時の指導者たちは、下部リーグでの戦いを単なる苦難と捉えず、チームの基礎を鍛え直す好機と捉えて改革を進めました。現在のAグループでの戦いぶりには、この時期に培われた逆境への強さが確実に生きています。
現在を指揮する石川安彦監督のプロフィール
2023年2月より指揮を執る石川安彦監督は、100周年を迎えた青山学院大学ラグビー部を新たなステージへと導くキーマンです。彼は早稲田大学出身でありながら、NECグリーンロケッツなどでトップレベルの選手として活躍し、引退後は指導者として豊富な経験を積んできました。外部からの招聘という形になりますが、その指導哲学は青学の校風とも深くマッチしています。
石川監督は、最新のスポーツ科学やデータ分析を積極的に取り入れ、効率的かつ効果的なトレーニングを導入しています。また、選手の自主性を尊重しつつも、勝負所での厳しさを求める指導スタイルで、チームに緊張感と自信を植え付けました。彼の就任により、チームは伝統を守りながらも現代ラグビーに適応した組織へと進化を遂げようとしています。
改革期を支えた2010年代以降の指導者たち

近年の青山学院大学ラグビー部は、単なる強化だけでなく、チーム文化の再定義や組織運営の近代化に取り組んできました。ここでは、それぞれの時期に指揮を執った監督たちがどのような改革を行い、チームに何を残したのかを深掘りします。
加藤尋久監督による外部招聘と意識改革
2016年に就任した加藤尋久監督は、日本大学ラグビー部の監督などを歴任した実績を持つ指導者であり、青学にとっては大きな改革の一手でした。彼は就任直後から、選手の意識改革とディフェンスシステムの整備に注力し、強豪校に対抗するための土台作りを徹底しました。特に、フィジカルコンタクトの強化と、80分間走りきるためのスタミナ作りは、当時のチームにとって最優先課題でした。
加藤監督の指導の下、選手たちは「自分たちもやればできる」という自信を持ち始め、対抗戦での戦いぶりにも変化が現れました。強豪相手にも接戦を演じる試合が増え、Aグループでの存在感を少しずつ高めていったのです。彼が植え付けた「戦う集団」としてのマインドセットは、その後の監督たちにも引き継がれる重要な遺産となりました。
大友孝芳監督が目指した人間形成と自律
2018年からチームを率いた大友孝芳監督は、勝利を目指すことはもちろん、ラグビーを通じた人間形成を強く掲げました。彼は「学生スポーツの本分は教育にある」という信念を持ち、選手一人ひとりが自ら考え、行動する「自律した組織」を作ることを目指しました。練習メニューの作成や戦術の立案にも学生を参画させるなど、ボトムアップ型のアプローチを取り入れたのが特徴です。
また、大友監督時代にはチームスローガンとして「LINK」などが掲げられ、部員同士の絆や地域との繋がりが重要視されました。技術的な指導だけでなく、社会に出てから通用する人材を育成するという視点は、多くの学生や保護者から支持を集めました。彼の指導によって育ったリーダーシップのある選手たちが、後のチームの核となっていったことは間違いありません。
清水孝哉監督の堅守速攻とコロナ禍の舵取り
2021年に就任した清水孝哉監督は、1995年卒のOBであり、ヤクルトでのコーチ経験も持つ実力派の指導者でした。彼の在任期間は新型コロナウイルスの感染拡大という未曾有の事態と重なりましたが、オンラインでのトレーニング指導や少人数制の練習など、工夫を凝らしてチーム力の維持・向上に努めました。厳しい制約の中でモチベーションを保つことは、並大抵の苦労ではなかったはずです。
戦術面では、青学の伝統である展開ラグビーに磨きをかけつつ、接点での激しさを追求する「堅守速攻」のスタイルを確立しました。相手の攻撃を粘り強いディフェンスで凌ぎ、一瞬の隙を突いてトライを奪う戦い方は、体格差のある上位校に対する有効な手段となりました。清水監督が築いた粘り強いチームカラーは、現在の石川体制にも確実に継承されています。
石川安彦監督の新体制と現在のアプローチ
創部100周年という記念すべきタイミングでバトンを受け取った石川安彦監督は、これまでの伝統を尊重しつつ、さらに高みを目指すための新しいアプローチを次々と導入しています。ここでは、現在のチームが行っている具体的な取り組みについて解説します。
石川監督の経歴と独自の指導哲学
石川監督は、現役時代に日本代表候補にも選ばれたトッププレイヤーとしての実績を持ち、引退後も多彩な指導経験を積んできました。彼の指導哲学の根幹にあるのは、「基本スキルの徹底」と「状況判断能力の向上」です。派手なプレーよりも、パスやタックルといった基本動作の精度を極限まで高めることを重視し、ミスを減らすことで勝機を見出すスタイルを徹底しています。
また、彼は選手との対話を非常に大切にし、一方的な指示ではなく、選手自身に「なぜそのプレーを選択したのか」を問いかける指導を行います。これにより、選手たちは試合中の複雑な局面でも自ら最適解を導き出せるようになり、チーム全体の戦術理解度が飛躍的に向上しました。論理的かつ情熱的な彼の指導は、学生たちに深い納得感と信頼を与えています。
100周年記念イヤーの取り組みと成果
2023年から2024年にかけての100周年記念イヤーにおいて、チームは「敬意と挑戦」をテーマに様々なプロジェクトを展開しました。記念試合の開催やOB・OGとの交流イベントはもちろん、強化面でも遠征や合宿の充実化が図られ、チームの一体感がかつてないほど高まりました。これらの活動は、現役部員に伝統の重みを肌で感じさせると同時に、新たな歴史を作る責任感を芽生えさせました。
競技面での成果としても、対抗戦でのパフォーマンス向上が見られ、特にディフェンスの組織力が格段に強化されました。上位校との試合でも簡単に崩される場面が減り、終盤まで勝敗の行方が分からない接戦を演じることができるようになっています。100周年という節目が、チームにとって単なるお祭りではなく、実質的な成長の起爆剤となったことは明らかです。
最新のチームスタイルと戦術的特徴
現在の青山学院大学ラグビー部のスタイルは、伝統的な「ボールを動かすラグビー」に、現代的な「フィジカルバトル」の要素を融合させたハイブリッド型です。FW(フォワード)はセットプレーの安定とブレイクダウンでの激しさを追求し、BK(バックス)は相手の防御網を撹乱するスピードと創造性を発揮します。特に、攻守の切り替え(トランジション)の速さは大学ラグビー界でも注目されています。
また、データ分析に基づいた対戦相手ごとの対策も徹底されており、試合ごとに柔軟に戦術を微修正する適応力の高さも特徴です。キックを有効に使って陣地を確保しつつ、敵陣に入れば多彩なアタックオプションで得点を狙うという、合理的かつアグレッシブなラグビーを展開しています。見ているファンにとっても、非常にスリリングで魅力的なラグビースタイルと言えるでしょう。
監督たちが築いた「青学ラグビー」の文化
歴代の監督たちが残したのは、戦績や戦術だけではありません。彼らが指導を通じて育んできた独自のチーム文化こそが、青山学院大学ラグビー部の最大の財産と言えます。ここでは、その文化の核心に迫ります。
「LINK」スローガンに見る結束力
近年、チームが掲げてきた「LINK」というスローガンは、単なる言葉以上の意味を持っています。これは、ピッチ上の選手同士の連携はもちろん、控え選手、スタッフ、OB・OG、そしてファンとの繋がりを大切にするという意思表示です。歴代の監督たちは、ラグビーというスポーツが一人では成立しないことを繰り返し説き、周囲への感謝の気持ちを持つことを徹底してきました。
この精神は、試合中の苦しい場面でこそ真価を発揮します。仲間がミスをした時にカバーし合う姿勢や、ワンチームとなって勝利を目指す一体感は、この「LINK」の精神が浸透しているからこそ生まれるものです。個人の能力に依存するのではなく、組織としての結束力で戦う姿勢は、青学ラグビーのアイデンティティそのものとなっています。
文武両道と社会人への人材輩出
青山学院大学ラグビー部は、学業と部活動の両立を非常に厳しく求めています。歴代の監督たちは、「ラグビー選手である前に、一人の学生であれ」という指導方針を貫き、テスト期間中の練習調整や学業成績の管理を徹底してきました。この文武両道の精神は、限られた時間の中で最大の成果を出すための工夫や集中力を養うことにも繋がっています。
その結果、多くの卒業生がラグビー界だけでなく、ビジネスの世界でも活躍しています。元日本代表マネージャーの大村武則氏のように、世界的な舞台でマネジメント能力を発揮するOBも少なくありません。監督たちが育てたのは、単にラグビーが上手い選手ではなく、社会の課題を解決し、リーダーシップを発揮できる人材なのです。
他大学との違いと独自の魅力
体育会的な厳格さがありながらも、青山学院大学らしいスマートさや自由な空気が共存している点が、このチームの独特な魅力です。監督たちは、理不尽な上下関係や旧態依然とした慣習を排除し、現代的で風通しの良い組織作りを進めてきました。学生が意見を言いやすい環境が整っているため、主体的にラグビーに取り組む選手が多いのが特徴です。
また、キャンパスの立地や大学全体のブランドイメージもあり、洗練されたチームカラーを持っています。しかし、グラウンドに立てば泥臭く体を張り、ひたむきにボールを追う姿が見られます。この「スマートさと泥臭さのギャップ」こそが、多くのファンを惹きつける理由であり、歴代監督たちが大切に守り育ててきた青学ラグビーの真髄と言えるでしょう。
今後の展望と観戦ガイド

最後に、これからの青山学院大学ラグビー部がどのような道を進んでいくのか、そしてファンとしてどのように応援を楽しめばよいのかについて解説します。新時代の到来を予感させるチームの未来に注目してください。
対抗戦Aグループでの立ち位置と目標
現在の青山学院大学ラグビー部の目標は、対抗戦Aグループでの上位進出と、悲願の大学選手権出場です。帝京、明治、早稲田といった強豪がひしめくリーグにおいて、中位グループから抜け出し、上位校の一角を崩すことが求められています。石川監督の下、フィジカルと戦術の両面で差を埋めるための強化が進んでおり、その差は年々縮まっています。
具体的には、セットプレーの安定感を武器に、接戦を勝ち切る勝負強さを身につけることが鍵となります。また、下位チームとの試合では確実に取りこぼしをなくし、安定した勝ち点を積み上げることが重要です。Aグループに定着するだけでなく、その中で台風の目となる存在へ。チームは今、明確な上昇気流に乗ろうとしています。
注目選手と監督の期待
今後のチームを背負う注目選手には、突破力のあるバックス陣や、献身的なタックルを見せるフランカーなどが挙げられます。石川監督は、特定のスター選手に頼るのではなく、全員がハードワークできる選手を高く評価し、起用する傾向があります。そのため、下級生であっても実力があれば積極的に試合に出場するチャンスがあり、チーム内競争が活性化しています。
監督が選手たちに期待しているのは、「自ら考え、判断し、実行する力」です。試合の流れを読み、その瞬間に何が必要かを瞬時に判断できる選手が増えれば、チーム力はさらに向上します。観戦の際は、ボールを持っている選手だけでなく、オフ・ザ・ボール(ボールを持っていない時)の動きや、選手同士の声かけにも注目してみてください。監督の意図を体現しようとする選手たちの姿が見えるはずです。
応援に行こう!試合会場と楽しみ方
青山学院大学ラグビー部の試合は、主に秩父宮ラグビー場や各大学のグラウンドで開催されます。特に対抗戦のシーズン(秋〜冬)は、各大学の応援団やファンが詰めかけ、熱気あふれる雰囲気となります。青学の応援席では、エンジやグリーンのチームカラーを身につけたファンが一体となって声援を送ります。初めての方でも、その熱量に触れればすぐに楽しめるはずです。
試合会場では、選手たちの激しいコンタクト音や息づかいを間近で感じることができます。また、試合後には選手たちがスタンドに挨拶に来る場面もあり、その清々しい表情を見るのも観戦の醍醐味の一つです。ぜひスタジアムに足を運び、100年の歴史を背負って戦う選手たち、そして彼らを導く監督の采配に熱いエールを送ってください。
まとめ:100年の歴史を受け継ぐ新時代の青学ラグビー
青山学院大学ラグビー部の歴代監督たちは、それぞれの時代において困難に立ち向かい、チームの伝統と文化を築き上げてきました。草創期の情熱、大学選手権出場の栄光、入替戦の苦闘、そして現在の改革と、その歴史の全てが今のチームの血肉となっています。
現在の石川安彦監督率いるチームは、これらの歴史を継承しつつ、最新の理論と科学的なトレーニングで新たなステージへと進もうとしています。「LINK」の精神で結ばれた選手たちが、対抗戦Aグループという厳しい舞台で旋風を巻き起こす日はそう遠くないでしょう。
これからラグビー観戦をする際は、ぜひベンチワークや監督の表情にも注目してみてください。そこには、100年の歴史を背負う指揮官の覚悟と、選手への深い愛情が見えるはずです。次回の試合、スタジアムで青学フィフティーンの勇姿を目撃しましょう。



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